恋愛小説の大家の70年代の作品。当時はこれが自立した新しいヒロイン像だったのかもしれないけど、今読むとどうだろう。小説や物語の受け止めに性差はあまり無いと思いたいけど、この作品は男女や過去の恋愛経験で感じ方が大きく変わるかもしれない。
主人公の乃里子は好きな男には言い寄ることができず、別の男たちに言い寄られて、ふらふらと一夜を過ごし、情に流されていってしまう。そのくせ、自分は自分を客観視できている、というような自意識も滲む。彼女に限らず、登場人物が男女とも揃いもそろって軽佻浮薄で、読んでいてなんだか疲れてしまった。身につまされるというようなこともなく……。
ただ、作中の大阪弁のあじわいだけでも一読の価値はある。
「大阪弁というのは元来が、円転滑脱で、親しみやすく、へりくだったいい方で、聞く方の耳をやさしく愛撫してさからわぬものである」