中上健次「枯木灘」
再読。中上健次の他の作品はよく読み返してきたが、代表作とも言えるこの作品は高校のころ以来かも。当時、なぜ自分がこの作品に強く惹かれたのか、そして今読んでもなぜ心が揺さぶられるのか分からない。文章は、冗長で、くどい。ただ、そこに胸が詰まるほどの切実さがある。
この小説に物語は書かれていない。書かれているのは、登場人物の行動とさらに思考も含めて、全てが情景描写にすぎないと言える。ただ、その背後に、豊穣で、読み手を痛みとともにその中に引きずり込む物語が存在している。
読んだ本の記録。