瀬戸内の小さな学校に口のきけない青年教師がやってくる、というあらすじだけ聞くと、「いい話」を狙いすぎているような気がして身構えてしまうけど、紛れもない名作。
舞台は戦後まだ間もないころの瀬戸内の小島。児童7人の小学校に北海道から赴任してきた臨時教諭の青年を中心にドラマが展開する。青年は大柄な体躯と、病気で口が利けないことから「機関(利かん)車先生」と呼ばれることになる。
保守的な大人から疎んじられていた青年が少しずつ島に受け入れられていき、同時に子供たちも成長していく。
物語の根底に、戦争という不条理を繰り返してはならないという強い思いが流れている。人間の愚かさを見つめつつ信じる、あたたかな作品。
教え子を戦地に行かせたことを悔いる校長先生の言葉が心に残る。
「泣いたり笑ったりが人間なのでしょうが、どうも泣くような立場になるものは泣いてばかりの方に行くんですね。けれど泣いてばかりじゃいけない。人間にはお腹の底から笑えることがあるんだ。それが生きるってことなんだということを、私は子供たちにちゃんと教えてやりたいんです」
「私は自分自身を見て、つくづく人間は愚かなものだと思います。愚かなことをする人間をつくらないことが肝心です。裸の王様を裸と言えるようにあの子供たちは育って欲しいと思っています。それだけでいいと思っているんです」