哀愁の町に霧が降るのだ

椎名誠「哀愁の町に霧が降るのだ」

 

自伝的長編エッセイ。安アパートの薄暗い六畳間で男四人の共同生活。当時の回想と、それを執筆する現在の著者の身辺雑記のような内容が交互に綴られる。

酒を飲んで、バカをして、くすぶっているうちに、ある日、停滞しているように見えた時間が確実に進んでいたことを知る。どんな日常もいつか必ず終わり、誰かと時間を共有するということが奇跡のようなものだったと気付く。

ドラマティックな展開や、胸を打つ結末はない。清々しい青春小説やビルドゥングスロマンを期待して読むと期待はずれかもしれないが、くすんでいるからこそ眩しくて、みっともないからこそ愛おしい青春の輝きに満ちている。

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