この世にたやすい仕事はない

津村記久子「この世にたやすい仕事はない」

前職で燃え尽きた36歳の女性が職安で紹介された仕事を転々としていく連作短編集。「コラーゲンの抽出を見守るような仕事」というふざけた要望に対して紹介されたちょっと奇妙な五つの仕事を通じて、主人公は自分の居場所を探していく。

監視カメラで小説家をひたすら見張る「みはりのしごと」。バスの車内広告アナウンスの文章を作る「バスのアナウンスのしごと」。菓子袋に書かれてる豆知識コーナーの内容を考える「おかきの袋のしごと」。街のポスターを貼り替える「路地を訪ねるしごと」。森林公園の小屋に一人で籠もる「大きな森の小屋での簡単なしごと」。

いわゆる「お仕事小説」は個人的にはあまり好きではないのだけど(小説の中でまで仕事のことを考えたくないから)、本作はユーモアとペーソスを兼ね備えた快作。

2015年度芸術選奨新人賞受賞作。

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