刊行は1986年だが、近年になって売れ行きが加速し、著者のベストに挙げる人も少なくない。
高度な文明を持つ星から移住し、技術を失ったかわりに超能力を手に入れ始めた人々が暮らす世界を旅する男ラゴス。
二度奴隷に身を落としながらも、ラゴスの旅は淡々と続いていく。波瀾万丈の人生を、著者の筆はあっさりと描く。
物語の後半、ラゴスの旅の目的が知識だったことが分かる。同時に、歴史の前で人間がいかにちっぽけな存在かということが浮かび上がる。
作中、「人間はただその一生のうち、自分に最も適していて最もやりたいと思うことに可能な限りの時間を充ててさえすればそれでいい筈だ」という言葉がある。
人生は旅であるという古典的な金言があるが、その旅とはもちろんパッケージツアーではない(そういう人生もあり得るだろうが)。人生が旅であるなら、行き先は自分で決めることができる。何を得るか、何を残すかではなく、どこをどう歩くかが問われている。そのことをラゴスの旅は示している。