柳田邦男「空白の天気図 核と災害1945・8・6/9・17」
原爆投下と終戦を挟んだ混乱期、1日も欠かすこと無く観測業務を続けた広島気象台の台員たち。通信も設備も壊滅した中で天気図は描けず、予報業務も行えなかった。9月17日の枕崎台風は、広島で上陸地の九州よりはるかに多い約2千人の死者行方不明者を出す。
非常時、情報が途絶した状況で災害が重なる恐ろしさ。一方で、物資不足や放射線被害に苦しみながらも、「欠測をしてはならない」という精神のもと、日々の仕事に淡々と向き合う台員の姿は、劇的という言葉とは遠い所でとても胸を打つ。
原爆による被害や、投下直後の気象の変化を記録するために行った聞き取り調査は、黒い雨の降雨域に関する貴重な記録につながっていく。