山本七平「『空気』の研究」
日本の社会は「空気」と「水」でできている。空気を読むことと、水を差すこと。判断を空気に任せてしまうことは、結局誰も責任をとらないことにつながる。出撃が無謀だというデータが揃っていたのに出撃し沈んだ戦艦大和から現代に至るまで、事例は枚挙にいとまがない。「そうせざるを得なかった」で突き進む日本社会。水を差すことは本質的な反省を含まず、空気の支配を強化している。
と、現代社会を考える上で大きなヒントをくれる一冊だが、著者が例としてあげているものが今となっては難あり。大気汚染における窒素酸化物、イタイイタイ病におけるカドミウムの悪者扱いを「空気」の実例としてあげているが、いや確かにそれは「空気」なんだろうけど、、、根拠薄弱な反論も「空気」と同根なのでは、、、と震災後に跋扈したエセ科学に対するもやもやした思いと同じものを感じた。