2020年に読んだ本は120冊(前年比↑6)、3万6733ページ(同↑1515)。ほぼ平年並みだけど、軽めの小説が多かったせいか、印象に残った本も少なく、本を読んだ実感というか、充実感のようなものはあまりない。
まずは「ニール・ヤング回想」。ニール・ヤングに関してはもはや信仰の域に入っているので、これは別格。「ニール・ヤング自伝」よりも読み応えがあった。
小説では、柴崎友香「百年と一日」、津村記久子「サキの忘れ物」。他に温又柔「魯肉飯のさえずり」、森見登美彦+上田誠「四畳半タイムマシンブルース」、大前粟生「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」など。新刊以外では、絲山秋子「薄情」、多和田葉子「容疑者の夜行列車」、山崎ナオコーラ「ボーイミーツガールの極端なもの」、西東三鬼「神戸・続神戸」、戯曲で谷賢一「福島三部作」。
また、保坂和志の小説は何冊か読んでいたけど、「小説の自由」「未明の闘争」「ハレルヤ」など近作を読んで、その小説観と文章に、小説の面白さと可能性を再認識させられた。
村上春樹の新刊は、短編集「一人称単数」より、自伝的エッセイ「猫を棄てる 父親について語るとき」の方が印象深かった。
娯楽小説を結構読んだ年で、バリントン・J・ベイリー「カエアンの聖衣」「禅銃」、綾辻行人「時計館の殺人」「Another」「同S」「同2001」、恒川光太郎「スタープレイヤー」「ヘブンメイカー」、今村昌弘「屍人荘の殺人」など、今さらだけど非常に面白かった。コロナ禍でどこにも行けない鬱屈とした日々の中、現実を忘れさせてくれる良質なフィクションの存在は何ものにも代え難い。
ノンフィクションはほとんど読まなかったが、旅に出られないフラストレーションからか、紀行ものはわりと手に取った。清水浩史「深夜航路」「不思議な島旅」、蔵前仁一「失われた旅を求めて」、小林真樹「食べ歩くインド」、田中真知「たまたまザイール、またコンゴ」、室橋裕和「バンコクドリーム」。
そのほか印象に残ったのは、杉本恭子「京大的文化事典」、田口洋美「越後三面山人記」、丸谷才一「文章読本」、斎藤美奈子「文章読本さん江」。