夫婦善哉

織田作之助「夫婦善哉 完全版」

商家のぼんぼんの駄目男、柳吉と、勝ち気で一途な元芸者の蝶子。商売を始めても柳吉が放蕩して使い果たしてしまい、生活は何度も行き詰まる。どうしようも無い話が延々と続いていくのに、なぜかとても魅力的。終盤の「一人より女夫(めおと)の方が良えいうことでっしゃろ」の台詞がぐっとくる。

別府に舞台を移した続編は、戦争の影が差して物語性は正編より強いのに、その輝きは薄れてしまっている。泥沼の大阪での生活で確かにあった“2人の世界”に外の社会が入り込んで、何かが失われた。

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