天平の甍

井上靖「天平の甍」

日本仏教の興隆期、命がけで唐に渡った留学僧と、戒律を日本にもたらした鑒真。淡々とした筆致で、歴史の中の人間を描く。

日本に持ち帰るための写経に生涯を費やしながら、経典もろとも海の藻屑と消える業行。鑒真招来に心血を注ぎながら、志半ばで病に倒れる栄叡。

大きな歴史の流れの中で、多くの人の人生には捨て石に過ぎない。だからこそ、その歴史の積み重ねである今が尊い。

コメントを残す