深夜特急1 香港・マカオ

沢木耕太郎「深夜特急1 香港・マカオ」

以前は旅行記の類はあまり面白いと思わなかった。就職して長旅が出来なくなってから、時々手に取るようになった。バックパッカーのバイブルとも言われるこの「深夜特急」も大学生の頃、インドかどこかの宿で誰かが置いていったものを読んだことがあるが、自分自身がまさに旅をしている時にはそれほど惹かれなかった。

改めて読み返してみて、旅を追体験―というよりも再度体験しているような気持ちになれた(第1巻に書かれている香港もマカオも実際は行ったことがないけど)。市場の熱気、安宿のよどんだ空気、初めての土地に降り立った時の“自由”の感覚――。自分が旅に出る前にこの本を読んでいたら大いに影響を受けただろうし、逆に当時は旅の最中に読んだから今読む必要はないと感じたのだろう。

思えば、大学生の頃には小説もあまり読まなかった。逆に高校生の頃は小説しか読まなかった。再び小説を欲するようになったのは就職してから。自由が無くなった時に物語や旅行記を求める。本は昔から変わらずに読んでいても、その動機はその時々で結構変わっているようだ。

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