「日本人の神」入門

島田裕巳「『日本人の神』入門 神道の歴史を読み解く」

日本には八百万の神がいるといっても、自分も含めて大抵の人は、せいぜい数柱の神の名前しか言えないのではないか。宗教というと伝統的なものと考えがちだが、日本の神々のあり方は古来、大きく変化してきた。仏教伝来、神仏習合、神仏分離などの変遷以外にも、祀られ方も神々の関係も今と往時では大きく異なっている。仏と神、神と霊、さまざまなものを習合させ、日本人の信仰は形成されてきた。

天照大神は皇祖神とされ、明治以降の歴代天皇が参拝してきたが、近世以前は天皇自身が参拝することはなかった。そもそも宮中から離れた伊勢に祀られた理由に、荒ぶる神として恐れられていたという背景があるという。

現在、最も社が多い八幡神は古事記にも日本書紀にも記述が無く渡来神とみられるが、応神天皇と習合し、後に武家の守護神となったことで急速に地位を高めた。

かつては霊を鎮めるために祀るという風習は無く、菅原道真は天神と習合したことで広く信仰を集めるようになり、さらに近世になると家康から明治天皇、乃木将軍まで、偉人を神として祀ることが広く行われるようになる。

全体として仮説が多く、「分かった!」というよりは「謎が多いことが分かった」という感じだけど、刺激的な一冊。

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