妊娠カレンダー

小川洋子「妊娠カレンダー」

「博士の愛した数式」や「ミーナの行進」のイメージで読むと戸惑うかもしれない。静謐で美しい文体は共通しているが、どこかもやもやとしたものが残る、仄暗い短編集。表題作のほか、「ドミトリイ」「夕暮れの給食室と雨のプール」を収録。

表題作は、同居する姉の妊娠中の日々を日記形式で綴る。喜怒哀楽に満ちているわけでもなく、ほのぼのしているわけでもない、極めて淡々とした描写が続く。そこに、悪意というような言葉で表現するのも難しい、かすかに歪んだ感情が顔を覗かせる。

「ドミトリイ」は、いとこの付き添いで学生時代に暮らした学生寮を訪れ、両手と片足の無い「先生」と再会する話。終盤の展開はサスペンスやホラーとして読むこともできるし、感傷に満ちた幻想と読むこともできる。

 

コメントを残す