おらおらでひとりいぐも

若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」

東北で生まれ、東京五輪の年に上京、夫と死に別れ、子供とも疎遠となり、一人老いていく。74歳の「桃子さん」のとりとめのない思考を綴った小説だが、独特の文体による語りの力が、年齢や性別を超えて読者を戦後の日本社会を生きてきた一人の女性の境地に誘う。

著者は63歳、デビュー作の本作で第158回(2017年下期)芥川賞にも輝いた。東北弁混じりの流れるような文体は、先鋭的でありながら泥臭く、洗練されつつ、暴力的。

文体だけでなく、一人の女性の人生の物語としても強い輝きを持っている。その輝きは、桃子さんの思索が決して過去だけに向かわず、今と前を向いているからだろう。全ての人の人生を肯定する力強さを持った傑作。

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