俺俺

星野智幸「俺俺」

ふとした思いつきでオレオレ詐欺を働いた途端、俺は別の「俺」になって、「俺」が社会に増殖していく。分かり合える分身の存在に最初は幸福感を抱く「俺」だが、やがて自分の醜悪な面も見続けることに耐えられなくなって「俺」同士の衝突が始まる。こう書くと意味不明だが、自分や他者、社会との向き合い方を、比喩ではなく実際に「俺」をもう一人、さらに一人と次々と登場させて描いていくという実験的手法で、破綻ぎりぎりで完成させている。

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