アーシュラ・K・ル=グウィン「パワー 西のはての年代記Ⅲ」
「西のはての年代記」第3作。類まれな記憶力と未来を見る能力を持ち、“幸福”な奴隷として学問を修めた少年ガヴィア。逃亡奴隷が築いた町も、人が人を支配する“力”が存在し、理想郷ではなかった。
自由とは何なのか。幸福を与えられることの欺瞞。前2作と違い、孤独で長い旅が描かれる。
3作を通じて描かれたのは、自由の意味や言葉の力。「増えることを求めているうちに、魂を強くする三つのもの―愛・学問・自由」。今や気恥ずかしいほどストレートなテーマに、“Gifts”“Voices”“Powers”という複数形のタイトル。そこに重層的な意味を持たせ、それを描ききる。凄まじい力量。