佐川君からの手紙

唐十郎「完全版 佐川君からの手紙」

芥川賞受賞作。小説としてはかなり読みにくい。唐十郎の筆は、冒頭で示された佐川一政、人肉食、異郷、というテーマからどんどん離れ、脈絡のない妄想のような世界に入り込む。読み進めるのに苦労を要するが、饒舌なイメージの連なりは、まさに唐の紅テント芝居のようで、筋を追うのを諦めたあたりで面白くなってくる。ラストも、唐の芝居の幕切れのカタルシスほどではないが、鮮やかで強い印象を残す。

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