神戸・続神戸

西東三鬼「神戸・続神戸」

著者の西東三鬼(1900~62)は俳人。「神戸」は、戦後間もない1954~56年に「俳句」誌に連載された文章。戦中に神戸の「国際ホテル」で過ごした日々の回想で、文章そのものは短いが、登場人物の濃さと、それを淡々と綴る著者の文章のギャップがなんとも言えない魅力を醸し出している。しばらく絶版となっていたが、昨年復刊され、新潮文庫に収録された。

無為な日々を送る著者のもとに、年齢も職業も国籍もバラバラの人々が入れ替わり立ち替わり訪ねてくる。奇人変人のエピソードはそれだけでも読み物として面白いが、それ以上に、そこに漂う自由を希求する人々の精神が気持ちいい。

著者自身も、戦前にシンガポールで歯科医院を営んでいたなどコスモポリタンな人物。何もかもが不自由になっていく戦時下の神戸において、そこに確かにあった自由の空気を愛惜の念とともに綴っている。

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