前川知大「散歩する侵略者」
いま最も面白い小劇場の劇団と言っても過言ではない「イキウメ」。その主宰で、作・演出を手がける前川知大の小説。
人から“概念”を奪う侵略者が街に現れるという意表を突く設定。彼らは人間の身体を乗っ取り、何食わぬ顔をして街を散歩しながら、概念を集めていく。「家族」「所有」「禁止」……。概念を奪われた人間は、そのことを理解できなくなり、社会生活が送れなくなる謎の病気が街に蔓延する。
小説としてはやや大味だが、イキウメの舞台に通じる日常と非日常の境界が溶け合うような物語に引き込まれる。