石川達三「青春の蹉跌」
青年期の思い上がりを描いた(爽やかさの全く無い)青春小説。登場人物がとにかくエゴイストで、読んでいて不快になること間違いなし。特に主人公は強い上昇志向とともに、自分は社会とうまく付き合うことができる、自らの運命を乗りこなせるという思い上がりを抱いていて、それが躓きを招く。自分はもっと謙虚だと思いつつ、気づかない場面で自分も自分の判断力を過信しているかもしれないと身につまされる。そしてまた、この主人公の自分が正しいと思い上がる徹底した独善性は、今の社会に通じる気持ち悪さがある。