青春を山に賭けて

植村直己「青春を山に賭けて」

植村直己の自伝。 今さらながら手にとって、予想以上に面白くてびっくり。アメリカやヨーロッパで肉体労働をしながら資金を稼ぎ、モンブランやキリマンジャロへ。アコンカグアの後にはアマゾンを筏で下る。旅や登山の商業パッケージ化が進む前の冒険物語で、読んでいてわくわくする。

ゴジュンバ・カン登頂時に極地法に疑問を感じて単独行に傾倒していった話から、ケニアでの一夜の恋といった赤裸々な話題まで、素朴な文体に飾らない人柄が滲む。肩肘張った精神性というようなものとは無縁で、行ってみたい、見てみたい、というストレートな思いが気持ち良い。好きなことにここまで自分をかけられるなんて。

「自分のやっている、何かわからない放浪の生活と登山は、自分の職業ではない。オレの山行は主義があって登っているのではなく、心の勇んだときに登るだけだと思われる」

最後まで読んで「現在、私は二十九歳」の一文に衝撃を受けた。

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