戦争と読書 水木しげる出征前手記

水木しげる、荒俣宏「戦争と読書 水木しげる出征前手記」

水木しげるが徴兵される直前に書いた手記。手記そのものは短く、半分以上が荒俣宏による解説で、それも水木の戦争体験というよりは、戦前の若者の教養主義についての内容。目前に迫った死の可能性にどう向き合うか。それは生きる意味にもつながってくる。戦前の青年がとにかくよく本を読み、よく悩んだという事実に驚かされる。

水木の手記にも、飄々としたイメージの現在から想像もできない、ある意味では青臭い苦悩が綴られている。出征という理不尽が目の前に迫る中、自己を、思考を捨てようとしつつ、それでも本を手に取り、考え続ける悲痛な叫びが胸を打つ。

戦争と比べられるものではないけど、自分も最近では震災後の1年間が、最も忙しかったはずなのに最も本を読んだ時期でもあることを思い出した。本がなくては精神的な平衡を保てなかったのだろう。

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