伊藤計劃、円城塔「屍者の帝国」
伊藤計劃の残したプロローグに円城塔が書き継いだSF作品。屍者が動き、社会を支えている19世紀末の世界。屍者技術の根幹を成し、人間の意志を生み出す、菌株=任意のX=言葉、という設定、意識や言語といったモチーフは「虐殺器官」「ハーモニー」を連想させ、まさに伊藤計劃のもの。
一方で、細かな要素を盛り込むサービス精神(と、それ故の読みにくさ)は紛れもなく円城塔の作品。主人公はワトソン、他にもアリョーシャ、ダーウィン、ヴァン・ヘルシング……という実在、非実在の歴史上の人物が次々と登場する。