先日発表された直木賞を受賞した作家の単行本デビュー作。
(本作ですばる文学賞最終候補に残り、その後に文学界新人賞受賞)
マンションの11階で、祖母と母、弟と暮らす女子高生、雛子の物語。
認知症の症状が現れ始めた祖母、苛立つ母、思春期の姉弟、父は単身赴任中。その危ういバランスが、地上からは離れた空間=11階の“宙の家”に重ねて描かれる。
眠っていても、ぼんやりしていても、人は少しずつ大人になっていく。環境も変化する。
柔らかで、細やかな内面描写は、著者のデビュー当初からの持ち味だったことが分かる。
併録の「空気」は「宙の家」の続編。