「想像」という電波に乗せて死者が語るラジオ。
震災が題材というだけで懐疑的な気持ちで読み始めたが、読んでみて真摯な作品という印象を受けた。
震災と言うよりは、身近な死者との向き合い方、そして身近でない死者への想像力の働かせ方。文体は軽妙でユニークだけど、どストレートな作品。あれほどの出来事を今フィクションで書く必要があるのかという問いからは逃れられないが、著者は自分がフィクションを書くことでしか関われないと自覚した上で果敢に試みている。
死者の声を想うことは、生者の独り善がりかもしれない。それでも、想像力を働かせることは絶対に必要だ。気のせいだとしても、その微かな声に耳を澄ませたい。