縮小ニッポンの衝撃

NHKスペシャル取材班「縮小ニッポンの衝撃」

2017年に発表された推計では、今後半世紀で日本の人口は約3900万人減り、2065年に8808万人になるという。2025年には5人に1人が75歳以上という超高齢社会に突入し、同時に東京でも人口が減少に転じる。2010年時点で人が住んでいた地点の約2割が2050年までに無住化するという推計もあり、日本社会は確実に縮小していく。

本書は2016年にNHKスペシャルで放送された内容を書籍化したもの。冒頭で、地方の過疎の影に隠れがちな東京の課題が明らかにされている。

現在東京は人口が増加しているが、それは「出生数―死亡数」の自然増ではなく、地方からの転入者が支えている。これまでの人口集中では、首都圏に集まってきたのは進学・就職に伴う20代が中心だったが、現在は30~40代が増加し、地方では暮らしていけないからという「ネガティブな集中」に変わってきているという。この世代の転入者は単身世帯のまま高齢化していく可能性が高く、人口ピラミッドの歪みと社会保障費の増加をもたらす。その傾向が最も顕著なのが豊島区で、2014年にシンクタンクが地方の過疎地区とともに「消滅可能性都市」の一つと指摘したことで注目を集めた。

東京に人と富が集中し、それを地方に再配分することで日本は成長してきた。やがて地方から東京への人の供給が断たれ、東京でも急速な高齢化と人口減少が進むことになる。

東京に続いて取り上げられているのが、2007年に財政再建団体に指定された北海道夕張市。夕張市は過去10年で人口が3割減少し、住民の高齢化率が5割を超えた。施設の統廃合とともに、インフラのコストを削減するため、市街地そのものを縮小させる必要に迫られている。その「撤退戦」は近い将来、他の都市でも始まるかもしれない。

他に、公共サービスを自治体から住民組織に移管する試みを始めた島根県雲南市、益田市、集団移転を検討し始めた京都府京丹後市の集落、首都圏で最も早く高齢化と人口減少が顕在化し、引き取り手のない単身世帯の遺骨が増えているという横須賀市の現状が紹介される。

今年生まれた子は2050年に31歳、2100年に81歳。今の子供たちは21世紀の後半の日本を生き、22世紀を目にするかもしれない。その頃、この社会はどうなっているのだろうか。

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