久しぶりの海外ミステリー。「ボーン・コレクター」から始まるリンカーン・ライムシリーズの第7弾。
“ウォッチメイカー”と名乗る犯罪者が、様々な拷問手法に想を得た残虐な手段で犯行を重ねていく。それに立ち向かうのは、科学捜査のプロフェッショナルで、四肢麻痺の天才――いわゆる安楽椅子探偵――のリンカーン・ライム。相棒で恋人のアメリア・サックス、キネシクスを用いた尋問のエキスパート、キャサリン・ダンスらとともに捜査を続けるうちに、ウォッチメイカーの事件と、警察官らによる汚職事件が交錯し、物語の展開は後半に行くにつれて加速していく。
特に下巻に入ってからの物語の二転三転がすさまじい。安易な叙述トリックではなく、物語そのものの運びで読者を欺く。ライム側だけでなく、ウォッチメイカー側の視点も描かれ、追う者と追われる者の行動は全て明かされている。それでも先が読めない。ご都合かと思ったら計算があり、あっけないと感じたら直後に驚かされる。緻密に構築された職人技のようなサスペンス小説。