てふてふ荘へようこそ

乾ルカ「てふてふ荘へようこそ」

古びたアパート。破格の家賃につられて入居すると、それぞれの部屋に地縛霊が取り憑いていて、幽霊との共同生活が始まる。ホラーというよりも、ファンタジータッチの人情喜劇。著者の作品はデビュー作の「夏光」しか読んだことがなかったので、作風の違いに驚いた。

それぞれの幽霊に物語があり、入居者にもそれぞれの悩みがある。幽霊が相手とはいえ、他者との関係で人は変わっていくという普遍的な主題を描いている。「夏光」は不気味な手触りを持った硬質な作品だったが、今作は温かな余韻が残る短編集。

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