黄色い夜

宮内悠介「黄色い夜」

物語の舞台はエチオピアに隣接する架空の「E国」。資源が無く、バベルの塔を思わせる巨大なカジノのみで成り立つ国家を、ある日本人が乗っ取ろうと企む。

カジノタワーは上層階に行くにつれ賭け金が跳ね上がり、最上階で勝てば国さえも手に入れることができる。

ギャンブルを題材としたフィクションは、その緊張感をいかに伝えるかが肝だが、心理戦を中心としたオリジナルかつシンプルなゲームが登場し、小説ならではのスリリングな展開が楽しめる。

著者は純文学的な作品とSF、エンタメ色の強い作品の双方を手がけ、芥川賞と直木賞に交互にノミネートを続けてきた。本作は船戸与一と阿佐田哲也の作品を組み合わせたような物語だが、そこに文学性とエンタメ性が無理なく同居している。荒唐無稽な物語が、ギャンブルの本質や現代社会の病理も浮かび上がらせる。

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