ジョーゼフ・キャンベル、ビル・モイヤーズ「神話の力」
ジョージ・ルーカスに影響を与えたことでも有名な神話学の泰斗、ジョーゼフ・キャンベルの対話集。
キャンベルは 、神話はメタファーであり、言葉に出来ない「真理」の一歩手前にあるものと言う。神話は、生きるということの経験と、苦しみにどう立ち向かうかを語る。そこでpassion(受難)はcompassion(ともに苦しむ)に昇華される。
神話学入門というより、キャンベル自身の人生観や宗教観について語っている部分が多く、期待した内容とはちょっと違った。ただそこで紹介されているさまざまな神話の世界は非常に面白く、含蓄に富んでいる。アステカ族には複数の天国があり、戦死した兵士と出産で死んだ母親の行く天国が同じという話からは、死と誕生、生と戦いなどについての人間の根源的な感覚が窺える。神話の主人公の多くが男性なのは、男性にはイニシエーション(通過儀礼)が必要だが、女性は身体の変化で自然と大人になるからという指摘も面白い。