逃亡

吉村昭「逃亡」

ふとしたきっかけで軍用飛行機を爆破し、航空隊を脱走する運命を背負った男の記録。

飯場を転々としながら終戦を迎え、その後も身を隠すように暮らし続ける。戦時下、反戦主義者でもない普通の人間が少しずつ追い詰められていく様子を、反戦でも無い、愛国でも無い、思想をはさまない淡々とした筆致で綴っていく。その静かな文章が、状況に翻弄される人生の脆さを際立たせている。

人の意志よりも、些細な事や社会の状況が選択肢を奪っていく。

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