童の神

今村翔吾「童の神」

タイトルの童は子供ではなく、まつろわぬ民のことを指す。鬼、土蜘蛛、滝夜叉、山姥などの名で呼ばれ、京人(みやこびと)から恐れ、蔑まれた人々。彼らが手を携え、朝廷に立ち向かう。

朝廷による蝦夷征討が一種の侵略であるという理解は今では珍しくないが、著者は大江山の鬼退治伝説に注目し、京周辺の被征服民に光を当てる。

皆既日食=凶事の日に生まれた桜暁丸は京人に故郷と家族を奪われ、やがてまつろわぬ民たちの頭目となる。酒呑童子と源頼光四天王の戦いが物語の背骨となっており、坂田金時ら四天王、童たちに共感する安倍晴明など、登場人物の造形も魅力的。

個性豊かな仲間が増えていき、理想の社会を築くため、強大な敵と対峙する。良くも悪くも漫画的な展開だが、最近のだらだらと何十巻も続くような少年漫画よりスピード感があって物語に引き込まれる。

この作品は大胆なフィクションだが、こうした数え切れない戦いの先に今の社会がある。そして、今の先に未来の社会がある。純然たるエンターテインメント作品だが、投げかけるテーマは大きい。

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