渡辺一史「こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち」
人工呼吸器をつけながら、親元を離れて自由に生きることを求める鹿野さんと、それを24時間体制で支えるボランティア。介助する側とされる側が互いの関係を問い続けたことが、“自立”生活を可能にした。
美談でもアンチ美談でもない、著者自身の悩みも含めた誠実な筆致が印象的。
夜中にバナナを食べたいと言い出したり、ボランティアに恋したり、人を怒鳴りつけることも多々ある鹿野さんは「介助される側」のイメージを大きくはみ出す強烈な個性を持った存在だが、そこに物語を落ち着けてしまうこともない。
「合う人とは合う、合わない人とは合わない」、一方で「人との関わりをあきらめない」。
障害の問題ではなく、対等な人間関係とは何か、生き方の普遍的なテーマについて考えさせられる。