東西不思議物語

澁澤龍彦「東西不思議物語」

妖怪、幽霊、魔術……西洋にこんな話がある、日本にも似たような話がある……と、東西の怪異譚を引きながら、イメージの差異や共通性を軽妙な語り口で紹介していく。

澁澤龍彦らしい衒学的な香りにどっぷりと浸かれる一冊。博識ぶりに驚くとともに、つまみ食い的な物足りなさも。

困ってるひと

大野更紗「困ってるひと」

闘病記ながら、見事なエンターテイメント。

共感できる所もあれば、できない所もあるけど、そんなのは当然のこと。生きることは大変だけど、自分の生きている場所で、自分なりに頑張ろう、そういう気持ちになれる。
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ポートレイト・イン・ジャズ

和田誠、村上春樹「ポートレイト・イン・ジャズ」

和田誠が描いたミュージシャンの肖像に村上春樹が短いエッセイを付けたもの。文章は気障すぎるけど、ジャズへの思いが伝わってきて、読んでるこちらも色々と聴きたくなる。

名盤ガイドや評伝とは違って非常に個人的な内容だけど、音楽を聴くってのは本来はこういうことなんだな、と思う。

わたしの旅に何をする。

宮田珠己「わたしの旅に何をする。」

活字で笑うことはめったにないけど、この人の文章は思わず吹き出してしまう。内田百閒の「阿房列車」的な面白さ。

冒頭から「会社なんか今すぐ辞めてやる、そうだ、今すぐにだ、という強い信念を十年近く持ち続けた意志の堅さが自慢である」とのあほらしさ。

池澤夏樹の世界文学リミックス

「池澤夏樹の世界文学リミックス」

古今東西の文学作品を軽妙な文章で渡り歩くエッセイ集。タイトルはちょっとださいけど、大変面白い。とにかく本を読みたくなる。

世界には数え切れないほど多様な物語があるし、読み切れないほど多くの本がある時代に生まれたことを幸せに思う。

アラスカ 永遠なる生命

星野道夫「アラスカ 永遠なる生命(いのち)」

写真にも文章にも自然への畏敬と優しさが溢れている。こんな言葉とまなざしを持ちたい。

巻末の父の言葉。「動物がどこにいるか探さないとわからないような写真。道夫らしい撮り方だと思います」。小さな命と大きな自然。シンプルだけど、それを1枚で感じさせる写真家は他にいない。

安部公房伝

安部ねり「安部公房伝」

安部公房ファンとしては、かなり期待して読んだら、期待値が高すぎたせいか、ちょっと物足りなかった。安部公房らしいエピソードや意外な一面が顔をのぞかせつつも、一つ一つの話が短くで、伝記というよりエッセイ。

村上春樹 雑文集

村上春樹「雑文集」

タイトル通り雑多な文章の寄せ集めだけど、どれも中身があって筋が通っている。評価は様々だが、同時代の作家では最も前向きに文章の力を信じている人だろう。

阿房列車

内田百間「阿房列車 ―内田百間集成1」

中身が全く無いのに面白い。最近エンタメノンフィクションという言葉が使われるが、その元祖とも言える。

石川淳の作品なんかを読んでも思うけど、日本文学の文体の豊穣さはいつの間に失われたのだろう。

晴れた日は巨大仏を見に

宮田珠己「晴れた日は巨大仏を見に」

日本各地に点在する巨大仏を訪ねる旅。誰がどうして建てたのか、のようなガイドブック的視点はほぼ皆無で、ただひたすら風景とのミスマッチを楽しんでいく。

宮田珠己本としてはややパワーに欠け、「私の旅に何をする」のようなユニークさ、有無を言わせないノリが少ないのが残念。面白いけど。