山川静夫「歌舞伎の愉しみ方」
型や舞台の作りなど、歌舞伎特有の表現技法や約束事を丁寧に解説した一冊。入門書ながら、著者の歌舞伎に対する愛が溢れている。山川静夫という名アナウンサー、芸能評論家のエッセイとして、歌舞伎にそれほど興味がなくても楽しく読めるのでは。
読んだ本の記録。
寺田寅彦「柿の種」
物理学者で俳人でもある寺田寅彦。他愛ない日常の話題が多いが、短いコラムの見本と言えるほど、すとんと心の中に入ってくる。大正時代の文章とは思えない。
「脚を切断してしまった人が、時々、なくなっている足の先のかゆみや痛みを感じることがあるそうである。総入れ歯をした人が、どうかすると、その歯がずきずきうずくように感じることもあるそうである。こういう話を聞きながら、私はふと、出家遁世の人の心を想いみた。生命のある限り、世を捨てるということは、とてもできそうに思われない」
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中野純「庶民に愛された地獄信仰の謎 小野小町は奪衣婆になったのか」
三途の川にいるという奪衣婆。ほとんど忘れられたような存在だけど、よく見ると閻魔像とセットであちこちに残っている。
各地の寺や道端に残る十王堂など、“地獄”を巡る旅。
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イシコ「世界一周ひとりメシ」
旅は好きだが、一人で飯屋に入るのは大嫌い。見知らぬ街を歩くのは楽しいけど、見知らぬ店に入るのは怖い。
「常連客ばかりだったらどうしよう。頼み方がわからないかもしれない。店主が怖かったら嫌だ。そうかといって店主からやたら話しかけられても困る……」
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幸田文「崩れ」
まるで非常に重いテーマの小説かのようなタイトルだが、「崩れ」は比喩ではなく、そのまま。
大谷崩れから有珠山まで、各地の地崩れを憑かれたように見て歩いたエッセイ。
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