恋する原発

高橋源一郎「恋する原発」

予想以上に不謹慎、想像以上にカオス。震災チャリティーAVを巡り、原発、宗教、天皇、北朝鮮に始まり、ディズニー、AKB、けいおん……、今ぱっと思いつく限りの「批判できない空気」があるテーマをエログロ交えて書き荒らす。

十年後、二十年後まで残っているような名作とは思わないけど、面白い。こういう作品が出せるのが文学や小説の懐の深さだろう。

河北新報のいちばん長い日 震災下の地元紙

河北新報社「河北新報のいちばん長い日 震災下の地元紙」

あの時、宮城や福島にいた記者が何を感じ、どう動いたのか。取材する記者一人一人も、人間で、被災者で、でも取材者と取材対象者は決して同じ立場ではない。

少しでも多くの人に読んで、自分ならどうするか想像してもらいたい記録。

「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか

開沼博「『フクシマ』論 原子力ムラはなぜ生まれたのか」

地方が自発的、自動的に中央に服従し、原発を抱きしめていく歴史。それを説明するには財政だけでなく、文化的、心情的な側面にも触れなくてはならない。原発推進派も反対派も語ることがない立地地域の実情を丁寧に追っている。

福島、それも原発に近い地域に住んだことがある人間なら、ここに書かれていることは当たり前で目新しさは無い。原発事故前に書かれた修士論文がもとで、地方を「植民地」と位置づける考察も単純すぎる気がするが、今だからこそ多くの人に知ってもらいたい現実。

世界の放射線被曝地調査

高田純「世界の放射線被曝地調査 ―自ら測定した渾身のレポート」

ルポのようで読み物として面白い。セミパラチンスクなどは有名だが、他にもこれほどの被曝地が地球上にあるというのが結構な衝撃。

「結果を住民に知らせることが調査の基本的ルールである」

今、福島県内に調査に入っている学者や市民団体に聞かせてやりたい。

三陸海岸大津波

吉村昭「三陸海岸大津波」

明治29、昭和8、35年…と繰り返し津波に襲われた三陸の記録。吉村昭の作品にしてはあっさり気味の文章だけど、収録された子供達の作文のためだけでも読む価値がある。

2度の壊滅を経て巨大な防潮堤を築いた田老町だが、今回再び町が消えた。著者が存命なら今何を書いただろう。

原子炉を眠らせ、太陽を呼び覚ませ

森永晴彦「原子炉を眠らせ、太陽を呼び覚ませ」

戦時中から原子核物理学に携わってきた研究者の14年前の提言。原子力の平和利用に理解を示しつつ、脱原発の道を探る。

太陽光という結論はいまや理想主義的すぎる気もするが、日本の原子力防災の甘さの指摘など、JCO事故以前の執筆とは思えない。