車谷長吉「赤目四十八瀧心中未遂」
“普通の人生”からドロップアウトして、安アパートの一室でひたすら串に臓物を刺し続ける日々。アマと呼ばれる往時の尼崎の雰囲気に引き込まれる。
どこにも馴染めない悲しみのようなものが全篇を通じて漂うが、ありがちな悲壮感の悪循環に陥らず、その手前で引いて、自身をも傍観している。そしてその姿勢を恥じている。心中も未遂に終わる(というより、そもそも未遂と呼べるほど本気だったのか)。
私小説として語られる作家だが、読んでいてあまり私小説という印象は受けない。
読んだ本の記録。