秋の牢獄

恒川光太郎「秋の牢獄」

突拍子もない設定で魅力的な小説世界を構築する著者の第3作。

ホラー作家と称されることもあるが、著者の作品は日本ホラー小説大賞を受賞したデビュー作「夜市」から、恐怖というよりも、ファンタジーや怪奇小説といったほうが近い。

本書は短編3本を収録。白眉は「神家没落」。日本各地を移動し続ける家にとらわれた男の話。その家がマレビトを連れてくる神域として古来存在したという設定が秀逸。

表題作は、延々と同じ1日を繰り返すことになった大学生が主人公。「幻は夜に成長する」は内面に地獄を育てる少女の物語。どちらも面白いが、それぞれプロローグ、ダイジェスト版といった印象があり、もう少し長めに読んでみたかった。

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