佐藤清彦「土壇場における人間の研究 ―ニューギニア闇の戦跡」
「ジャワの極楽、ビルマの地獄、死んでも帰れぬニューギニア」と恐れられたニューギニア戦線。文字通り同胞相食む極限状態に陥った日本軍兵士の状況を、膨大な手記や証言から明らかにしていく労作。
極度の飢餓に陥った同戦線では人肉食に関する証言が多数あるが、一方では隠そうとし、一方では偽悪的に誇張して語る者がおり、正確な状況はつかみづらい。さらに投降など現代からすれば別に恥でも無いようなことを確認することがいかに困難か。
敗戦前に逃亡し、敗戦を知って原隊に合流した兵も容赦なく処刑された。逃亡兵は国に帰さない。戦争が終わっているのに「敵前逃亡は死刑」の原則が貫かれた。極限状態でも軍の体面が重視される。あるいは極限状態だからこそ理性を失っていたのかもしれない。
半世紀が過ぎても投降を恥じ、隠れて生き続ける人の多さにも驚かされる。