演劇のことば

平田オリザ「演劇のことば」

築地小劇場以降の演劇史を振り返りつつ、なぜ演劇と日常の言葉遣いが隔絶してしまったのかを考察する。

日本では歌舞伎や人形浄瑠璃の興行が発達しており、音楽や美術のように西洋芸術を直接移入せず、既存の演劇を改良しようとすることで近代化が始まった。それがかえって演技の近代化の遅れに繋がり、やっと岸田國士などが登場し始めた時には政治が芸術を取り込み始めていた。演劇はイデオロギーの言葉を語らざるを得ず、成熟できないまま戦後に至る。結果的に、演技とは、日常離れした言葉をいかに役者の身体にのせるかという特殊な技術となっていった。

近代演劇史に関する手頃な本があまりない中、分かりやすい一冊。

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