澤地久枝「14歳〈フォーティーン〉 満州開拓村からの帰還」
ノンフィクションの大家による自身の戦争体験記。満州に暮らした女学校時代の回想から、引き揚げまで。思春期の記憶を頼りに書いていて、同様の体験記に比べて決して濃い内容ではないが、等身大の記憶として受け止められる。
著者はこの時代を「語りたくない人生体験」と綴っている。帯に「わたしは軍国少女だった」とあるが、戦争に熱狂したというよりは、戦争を当たり前のものとして受け止めている冷めた印象を受ける。そして、当時の大多数の人々もそうだったのではないか。少女だった著者に限らず当時の大人も含めて、熱狂したわけではない(あるいは熱狂の自覚が無い)ままに、戦争を受け止め、細かなことを知ろうとせずに敵を敵として憎み、人々が“人並み”に戦果に一喜一憂した結果が一億総玉砕という言葉にまで至ったのだろう。