銀花の蔵

遠田潤子「銀花の蔵」

奈良県の老舗醤油蔵を舞台とした家族の物語。

大阪万博を控えた1968年、小学生の銀花は、絵描きの父、ある問題を抱えた母とともに、醤油蔵を営む父の実家に移り住む。一家を襲う数々の苦難を乗り越え、大人になった銀花は、血縁にとらわれない新たな家族を築く。

家族の問題てんこもりで、物語の都合で事件が起こる印象は拭えないものの、登場人物の変化、成長が一人一人丁寧に描かれており、人間ドラマに引き込まれる。特に銀花の成長は生身のような熱が感じられ、読みながら自然と彼女に寄り添うことができる。

旧家を舞台にした大河小説、ビルドゥングスロマンはこれまでも多くの傑作が書かれてきたが、それに連なる一作。

コメントを残す