主君を殺し、将軍を暗殺し、大仏殿を焼く。「三悪」を犯した人物として語られることが多い戦後武将、松永久秀の生涯を描く長編小説。
三好長慶や織田信長に仕えた久秀は、斎藤道三や宇喜多直家とともに戦国時代を代表する梟雄、悪役として知られるが、その生涯は不明な点が多い。
「じんかん=人間」は「世の中」を表す。著者は資料の無い前半生を丁寧に創作し、人々の間で悩みながらも、「民が政を執る世を作る」という理想のために戦う人物として久秀を造形した。
荒んだ世の中を生き抜く少年期、理想に燃える青春期に比べ、後半生は挫折が続き、冗長な戦が繰り返される。ただ人生とはそういうものかもしれない。運命に抗い続ける久秀の姿は、悲壮な場面でもどこか痛快。