その話は今日はやめておきましょう

井上荒野「その話は今日はやめておきましょう」

72歳と69歳の老夫婦の日常に26歳の青年が現れ、揺らぎが生じる。

夫婦は家事手伝いとして雇った青年に依存を深めていくが、彼が来ると金品が無くなることに気付く。青年のことを疑いながらも責めることができない。

老夫婦の老いへの戸惑い、漠然とした不安。青年の行き場のない苛立ち、葛藤。心理描写が丁寧で引き込まれる。

夫婦と青年は世代も社会的立場も断絶している。一方で偶然からつながり、それがきっかけとなってそれぞれの生活が変化する。地に足を着けて前を向くようなラストは暗くない。

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