傲慢と善良

辻村深月「傲慢と善良」

自己評価は低いのに、自己愛はとても強い。いい人だけど、傲慢。そんな現代人の姿を、婚活で悩む男女の姿を通じて、くどいくらいに描いている。

異性にもててきたが、過去の恋愛を引きずって結婚のタイミングを逸した東京育ちの架と、地方都市(前橋)で母親の言うとおりに生きてきた真実。婚活で知り合った2人は順調に結婚に向けて準備を進めていたが、ストーカーにつきまとわれていたという真美が突然姿を消すことでミステリー調の物語が動き出す。

タイトルはオースティンの「高慢と偏見」から。現代の婚活や恋愛がうまくいかないのは、高慢と偏見ではなく、傲慢と善良さの同居にあるのではないか。

誰に対しても「ピンとこない」という息苦しさ。相手を品定めせざるを得ないという婚活の苦悩が「大恋愛」へと変わる終盤が爽快。

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