平成くん、さようなら

古市憲寿「平成くん、さようなら」

気鋭の若手学者として脚光を浴び、平成を象徴する人物としてメディアで活躍する平成(ひとなり)くん。平成の終わりと共に安楽死を考える彼の姿を、恋人の目を通して描く。

商品名など時代を表す固有名詞が大量に出てくるが、安楽死が認められるようになっているという点で、作中の日本社会は現実とは異なるパラレルワールドになっている。

平成くんは恋人との会話や取材を通じて死の意味を考え直し、自らの分身のようなスマート(AI)スピーカーを残して消える。性欲が希薄で、どんな物事も情報として接しようとする一方、好き嫌いの激しい幼い人物として描かれている平成くんの造形は興味深いが、物語が後半、良くも悪くもセンチメンタルな人間ドラマになってしまい、安楽死を巡る考察も物足りなかった。

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