いつも旅のなか

角田光代「いつも旅のなか」

著者の作品を読むようになったのは比較的最近で、バックパッカーのような旅をしていたことや、旅のエッセイを結構書いていることも知らなかった。

旅行記の面白さには二種類あって、一つは自分ができない旅を体験させてくれること、もう一つは自分がした旅を思い出させてくれること。著者のエッセイは後者(団体旅行しかしたことがない人には前者だろうけど)で、等身大の旅の描写に、読みながらうなずくことが多かった。

取り上げられているのは、著者がこよなく愛するタイから、中国、モロッコ、キューバまで、20代から30代半ばにかけての旅。多くの人の共感を呼ぶであろう話題が、20代で楽しかった旅のスタイルが、30代になってつまらなくなってきたというラオス旅行の話。

旅に限ったことではないけど、自分の感性が変わってしまったことに気付くのはどこか切ない。思い出の中の旅は、いつだって眩しい。

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