昨日星を探した言い訳

河野裕「昨日星を探した言い訳」

いわゆるライトノベルを中心に書いてきた作家だが、作品のテーマは真摯で重い。

物語の舞台は、被征服民にルーツを持つ「緑色の目」の住民への差別、偏見が根深く残っている架空の日本。全寮制の学園に通う坂口孝文は緑の目を持つ転入生、茅森良子と知り合い、次第にひかれていく。

恋愛小説をうたっているが、小説としての構えはもっと大きい(逆に恋愛小説として読むと少し物足りない。別離から再会の空白の8年を描いてほしい)。

瞳の色を気にしない社会と、瞳の色に誇りを持てる社会のどちらが正しいのか。真の平等とは――。「正しさ」を巡って登場人物が対話を繰り広げる。意見や立場の違いを超えて、対話を諦めない登場人物の姿が気持ちいい。

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