伊藤正一「定本 黒部の山賊 アルプスの怪」
戦後間もない頃に北アルプス最奥の地に山小屋を買い、そこに住み着いていた「山賊」とともに雲ノ平を拓き、登山者を見守ってきた伊藤正一氏。狩りの話から、ヘリコプターの無い時代の小屋建設の苦労、遭難者の救助。さらに、佐々成政の埋蔵金伝説をめぐる悲喜こもごもや、カッパや化け狸の話まで。
人間の領域が今よりも遥かに小さかった時代。明治から戦後間もない時期までは、こうした世界が山の中に広がっていたんだろうと思わせる。
1964年刊。二年前に復刊されるまで手に入りにくかった本だが、これは北アルプス行きの必読書と言っても良いのでは。